22世紀研究所・ヨット

石井先生の「ビギナーのためのヨット入門」を読む

石井正行先生は、日本人で初めての国際ジャッジとして、海外のヨットレースで活躍をされている。1964(昭和39年)東京オリンピックにも、日本代表として出場された。
ヨットレースへ、スキッパーとして参加したときに、初めてお目にかかった。マニラ・ヨットクラブでのレースの時だ。2回目のレースが終わったときに、鋭い質問を浴びた。「青木さん、今日のレースでとったコースは、どのような理由で選択しましたか」。にこやかな顔のままであるが、質問は厳しい。
微風に終始した今日のレースでは、中排水量のピーターソン33には、分が悪かった。しかしそんな言い訳を聞いておられるのではない。コースの選択そのものだ。スタートは先頭集団であったが、途中で大きくシフトした風によって、結果は中位となった。自分でもコース選択の誤りは理解していた。
「リフターの風に合わせていっただけです・・・」
「そうですか・・・」
じろりと目を見つめられるが、それ以上は言わない。石井先生も、理由を見抜いておられたのだろう。
クルーが皆不慣れであったために、積極的に仕掛けるのをためらう気持ちが、誤りを生み出したのだ。審判艇から観戦しているだけで、コース選択の不利さを見抜いた眼力は、さすがだ。それ以来石井先生を尊敬する一人に加えていた。

きのう本屋の棚で、何気なく「ビギナーのためのヨット入門」を手に取った。中を斜め読みして驚いた。その内容のシンプルさ、適切さ、そしてあいまいさの無さ。自分の技術はもちろん、セーリング理論の明確な根拠がなくしては、このようなシンプルな技術書は書き得ない。なぜなら易しいことを難しく書くのは、容易だ。しかし難しいことを易しく書くことは、とても難しい。何倍もの努力を必要とする。
ヨットの解説本の多くは反対だ。わざと難しく書いたのかと思えるような内容であったり、自己流の思い込みが多かったりする。なかには自分の経験の多さを、自慢するようなものまである。自分の弱点を見せまいとするとき、自分は偉いのだと表現したくなる。惑わされるビギナーは、たまらない。

「ビギナーのためのヨット入門」はビギナーだけではない。ベテランこそが読んで欲しい本だ。クルーザー乗りにとっても、セーリング技術を身につけたい人には、すばらしく価値ある書籍だ。アマゾンで早速注文した。

 

 

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